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ドライテクニックについて

助産師前原さんに聞く! 赤ちゃんのためのドライテクニック

新生児の肌にストレスを与えない、
沐浴をしない「ドライテクニック」。
赤ちゃんの体の仕組みと一緒に、
ドライテクニックの大切さを
助産師・前原英子さんに教えてもらいました。

れいこ助産院  前原 英子さん
広島鉄道病院勤務後、平成11年に広島市内でれいこ助産院開業。自宅出産、保健指導(乳房ケア、母乳相談、育児相談、ベビーマッサージ)などを行う。年間約30件の自宅出産に立ち会う(総数342件/2014年11月末時点)。平成19年からドライテクニックを実践しています。

●れいこ助産院/TEL082-251-4968 広島市南区宇品神田5丁目26-9

ドライテクニックとは?

ドライテクニックとは、赤ちゃんの胎脂(※)をできるだけ残すために、生後は皮膚についた血液だけを拭きとり、4~5日間は沐浴をしない方法です。血液や粘液等の付着の多い頭部のみをそっとお湯で洗います。衣類の交換は毎日行い、赤ちゃんの全身観察と皮膚面の清潔を保つようにします。発汗が始まるのは成熟児で生後4~5日と言われているため、発汗が始まるまでの生後5日間はドライテクニックで、その後は温水浴がよいと考えられています。

胎脂は、新生児の肌を守るバリアです。羊水の中でも赤ちゃんの肌にうるおいを保つ働きがあり、出生後も環境の変化で新生児の肌が乾燥しないように守ります。沐浴をせず胎脂を残すドライテクニックを行うことで、赤ちゃんの体温保持、沐浴による体力消耗の予防、生理的体重減少の抑制、黄疸の減少、乾燥・感染などの皮膚トラブルの減少につながります。

※胎脂とは、母親のお腹の中で赤ちゃんを包んでいるクリーム状の脂(あぶら)のこと。

どういう場合にドライテクニックが向いているの?

赤ちゃんはドライテクニックを受けるメリットはあります。特に、両親のどちらかが皮膚トラブルをもっている場合や、上のお子さんの乳児期に皮膚トラブルで悩まれたということがあれば、ドライテクニックを選択する価値は充分にあると思います。

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私の体験談/肌はスベスベでよい匂い

私は、初めての出産でドライテクニックを実施しました。次の子もドライテクニックをしようと思っています。出生後、1週間お風呂にいれなくても、肌はスベスベで清潔な匂いがしました。生後4カ月頃、額の髪の生え際に黄色のブツブツができた時は、お湯で洗い流すだけで自然に治りました。生後から5カ月経った今もお風呂は石鹸を使わず、お湯で洗い流すだけです。肌荒れもなく、赤ちゃんはとてもよい匂いがします。

前原助産師のお話

お湯を入れた洗面器を用意します。出産時に頭髪に付いた羊水や血液をガーゼや綿で洗い流し、柔らかい布で拭きます。24時間または36時間経って初めて洗います。その他は、腕も胸も背中も、それから足も洗いませんし、拭きません。ほこり埃もたまりやすくお乳を飲んだり動かしたりする首筋や手は、お湯に浸して絞ったガーゼで軽く押さえ拭きをします。

胎脂は、皮膚を守ります。時間が経つと胎脂は自然に消えていきます。赤ちゃんの脇、そけい部にはちょっと分厚い胎脂が残っているので、そこだけは押さえながらそっと拭きとります。絶対こするような拭き方をしないで、やさしく押さえて押さえて取り除きます。

体重を測り、皮膚の黄染(黄疸)を見て、その他湿疹がみられないかどうかを観察します。ドライテクニック後の赤ちゃんは、洗っていないのにも関わらず、お肌はきれいです。

ドライテクニックのよいところは、家族全員で簡単にできるということです。初めに私のやり方を見てもらいます。そして「こことここは気をつけてね」とポイントを教えます。特に私が援助している家庭出産(※)は、家族全員が赤ちゃんに関わってくれるんですよ。お世話をすると、お兄ちゃんはもう弟がかわいくてしょうがない。お父さんが赤ちゃんを…小学生のお兄ちゃんが赤ちゃんをドライテクニックしているんです。

※家庭出産とは、家族に見守られ、自宅でお産をすること。

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前原さんのドライテクニック経験談&アドバイス

●へその緒の脱落が比較的早い

ドライテクニックを行った赤ちゃんは、毎日入浴している赤ちゃんに比べてへその緒の脱落が早いです。早い子は3日目に脱落します。入浴しないのでへその緒はぬれることなく、どんどん乾燥していき、ぽろりと落ちてしまいます。

●黄疸で治療を受けた子は、136人中1人

新生児黄疸は、ひどくなると光線療法や血液交換をすることもあります。私がドライテクニックをした136人の赤ちゃんの中で、黄疸で治療を受けた子はたった1人です。それも1日治療を受けたら正常値になりました。へその緒が早く取れるとか黄疸の症状があまりでないなど、ドライテクニックの二次的な効果ですが、「入浴をしないこと」は赤ちゃんに与える影響が少ないことがわかります。

●母乳育児は大切です。赤ちゃんと多くの時間を

母乳育児はとても大切です。お乳をあげる時は、赤ちゃんを必ずだっこして顔を見ながらお乳をあげます。赤ちゃんは、お母さんの匂いを感じながら胸にだかれて、温かいお乳を飲んで心が満ちたりて眠ります。

赤ちゃんの心の中に「信頼」の芽が育まれていきます。


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私の体験談/哺乳力の弱い赤ちゃんにドライテクニック

子どもは、3180gで産まれてきましたが、乳首を上手に含むことができず、体重が減少したまま上昇するまで日にちがかかりました。

その間、ドライテクニックを行いました。子どもの体の消耗を抑えることができたので、黄疸も強くならなかったのではないかと思います。へその緒がとれたのは5日目でした。お湯に浸けていないので消毒は不要でした。

頭髪についた血液や汚れだけを温湯で洗い流しました。頭、顔、首筋、脇、陰部を拭き服を着替えさせるだけです。湿疹などは出ず、匂いも全く気になりません。肌はつるつるでした。

私は、切迫早産で安静期間が長く、産後の育児を行う体力に自信がありませんでした。ドライテクニックは簡単なので、自分で無理なく世話をすることができ、母乳育児に専念できました。出生後丸1カ月経ち、夫の休日の日に初めて子どもをお風呂にいれました。

参考文献/『周産期スタッフ プロフェッショナル育成プラン ペリネイタルケア2006年夏季増刊』
            (メディカル出版)より

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