HOMEアトピっ子の素肌をつくる > おわりに

おわりに

アトピー性皮膚炎が治ることを皆さんにお伝えしたくて本書を書きました。少しでもお役にたつページがあればこれほど嬉しいことはありません。アトピー性皮膚炎は、治っていきます。治るまでには少し時間が必用ですから、子どもを信じて待っていて下さい。

現代の核家族という生活スタイルは、気軽に生活できる一方でお母さんたちに不安で孤独な子育ての闘いを強いているようです。核家族のマイナス面は、子育ての経験が少ないお母さんたちに、子育ての自然な方法がわからず、援助も得にくいことです。おじいちゃんが「そんなものどうってことない。ほうっておけばそのうち治るさ」と「気にしない強さ」を伝え、赤ちゃんの機嫌の悪いときには、おばあちゃんが抱っこで散歩に連れて行き、お母さんが疲れた時に家事を手伝う手があれば、子どものアトピーで病院に行く必要はなかったのですから。

ステロイドは「慎重に使えば副作用の心配はない」と言い続けられ、今も「副作用のない魔法の薬」のように扱われています。病院をかえる度に「それはステロイドの使い方がまちがっている。正しい使い方は〇〇です」と、指導をされます。副作用は薬のもっている薬理作用です。薬を使えば副作用が起きることは避けられません。

ステロイド治療は、一種の賭けのように思います。数年、もしかしたら数十年は使いこなせるのかもしれない。でも、その後はわからないし、使いこなせなくなる危険が高いのです。

利便性を求めて薬に頼り、そしてやめられなくなる。ステロイドをやめられず、重症化したアトピーを自分の人生の有難くない道連れとしている成人が多くいるのはなぜでしょう。

ステロイドを使わないのは患者の責任

ステロイドを使うのも患者の責任

ステロイドでかゆみがコントロールできないのは患者の責任

ステロイドの効果がなくなったのは患者の責任

ステロイドをやめて苦しむのは患者の責任

ステロイドを使いこなせないのは患者さの責任

そんな馬鹿な話はありません。 皮膚科専門医によって、指導方法の違うステロイド外用剤を、素人の患者さんが副作用がでないように、使いこなせるはずがありません。

自分の健康を守るのは自分の責任です。そのための治療方法を選択する責任も自分にあります。しかし、選択するための説明が医師から十分に行われることが必須です。将来に及ぶ薬の副作用を知らされずに、子どもの健康を守るための治療選択はできません。

また、薬に頼る前に「いろいろ工夫できることがある」のが示されれば、少し時間はかかるけれどアトピーの自然治癒に向かって努力してみよう、という選択が生まれます。

ステロイドを使わないお母さんは、救いのはずの医療機関で、怒られたり、胸を痛める言葉を投げつけられます。信じられないくらい「ドクターハラスメント」が診察室で行われています。生涯にわたって依存の危険のある薬を、わが子に使いたいと思う母親がいるでしょうか? お母さんの気持ちは「わが子のアトピーを本当に治したい」です。

医療機関から、「非科学的で、勝手な盲信にとらわれる哀れな人間」のような扱いをされても、そんなことは、負けてはいられません。薬を使わなければアトピーは自然治癒に向かっていきます。副作用に苦しむこともありません。子どもは自分の力で治っていくのですから。皮膚には数億年かけて、ありとあらゆる環境を生き延びてきた知恵が刷りこまれているのです。

アトピッ子を連れてこられたお母さんたちは、子育ての中であちらこちらの方とつながりをもつことで希望が生まれ、気持ちを強くし、子どもたちはよくなっていきました。「大きくなれば治るよ」と声をかけてもらって安心するのです。「つながりをもつこと」は、幸せへの道筋です。

本の「はじめに」で掲載した写真は、写真集『ヒトが人間になる』(川島浩撮影)から転載させていただきました。亡き斎藤公子先生が創設なさった「さくら・さくらんぼ保育園」(埼玉県深谷市)での保育風景です。この写真集を開くと、子どもの幸せとは何かを考えさせられます

アトピッ子たちが治るということは、「子どもが健やかに成長する」ことといっしょなのだと思われるのです。

写真転載許可をくださいました故・川島浩さんの奥様・環さん、素敵な挿絵を描いてくださった越川道江さん、中脇知咲さん、体験を書いてくださったアトピッ子のお母さんたち、ありがとうございました。そして、私のわがままな希望に、根気よく付き合い、本のデザイン編集をしてくださった占部美咲さん、ありがとうございました。占部さんなしに、この本は誕生しませんでした。

最後に本を読んでくださったみなさんに、心から御礼申し上げます。

隅田 さちえ

ページのTOPへ