コラム/中身のわからない薬は「ぬらない」
「ステロイドが入ってない」漢方クリームと信じていたアトピーの薬に、
じつはステロイドが入っていたら、あなたはどうしますか?
実際に事件も起きています。
ステロイド以外に「アトピーに効く薬」はありません。
中身のわからない薬は、ぬらないでください。
患者さんが、横浜の山口医院の付け薬をもってこられました。
「これまでステロイドがいやで、絶対にステロイドが入っていないという軟膏をもらってきました。遠く他県にいってもらって使っています。ぬると皮膚がとてもよくなります。1年以上使っています。1回に数万円することもありますが、大切な薬です。
同じ薬を使っている友人がこの薬を消費者センターに出して成分の検査を依頼しました。消費者センターから『軟膏からステロイド成分が検出された』と言われたそうで心配です」
2014年1月、横浜の山口医院で副作用の恐れがあるステロイド入りぬり薬を「ステロイドを使っていない漢方クリーム」として、患者約1600人に5グラム4000円と高額で販売していたとし、横浜市はこの医院に対して業務改善を指導したと、全国の新聞各紙が報じました。
報道の後で多くの患者さんが山口医院に駆けつけ、数カ月後に医院は閉院になりました。ホームページ上でも「これまで効かなかったアトピー患者はいない」と広告していたので、横浜市だけでなく、中四国や九州からも患者さんが来られていたようです。「漢方クリーム」に入っていたステロイドはクロベタゾールプロピオン酸エステルで、ステロイドの中では最も強い「Strongest」のランクでした。
患者さんは「医院」で「絶対にステロイドは入っていない」と言われ信じたのですが、ステロイドとプロトピック以外に「アトピーによく効く薬」はありません。処方箋のない軟膏は、医院でもらうものでも、中身のわからないものには危険が一杯です。
「ステロイドは入っていないアトピー治療の軟膏」という謳い文句で、強力なステロイドが入っていたケースは、市販に売られているクリームなどでもあり、繰り返し報道されてきました。
日本では、病院に行くと処方箋が発行されます。処方箋には、薬の商品名や薬品名(一般名)が記入してあり、容量用法なども記載があります。一般名は難しくて薬がどういう働きのある薬なのかわからないこともよくあります。ステロイドが処方されているときも「ステロイド」とは記載はされず、「プロピオン酸クロベタゾール」などという記載になります。
薬にステロイドが入っているかわからない時でも、処方箋があれば薬局で教えてもらうことができます。処方箋に記載されている薬品名は全国共通ですから、ステロイドだけでなく、抗生剤なのか、痛みどめなのか、胃薬なのか、知ることができます。
一方、山口医院のように処方箋はなく、「漢方クリーム」というだけで内容の薬品名のないものは、中にはいっている成分については全くわかりません。薬品名などの記載シールの貼っていない容器に入っている薬の成分を調べることは、個人では難しくてできないため、使わないことをおすすめします。
「漢方」という言葉のもつ「あいまいな魅力」を信じて、その後後悔されることのないようご注意ください。一般の「アトピーによく効く化粧水・クリーム」なども中身のわからないものなので、使用しないのが一番安全です。