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ドライテクニックについて

ぼくのドライテクニック

ドライテクニックは、遅れてからでも大丈夫

ぼくにはお兄ちゃん、お姉ちゃんがいます。

お母さんは、薬のことは昔何も知らなかったそうです。それで、かゆがるお兄ちゃんたちを小児科に連れていって、「ス・テ・ロ・イ・ド」をもらってぬっていました。お風呂の時は石鹸を使って体を洗って、お風呂からでたらあちこちにステロイドをぬって、洗ってぬって洗ってぬって、エンドレスでがんばったんだって。でもね、ぬってもぬっても治らなくて、お母さんは、必死でがんばったんだ。

「なんで治らないのだろう。なんで、かゆがるのだろう」って、24時間頭の中は、アトピーのことばっかり。「評判がよい皮膚科」があると聞けば何カ所でも診察を受けにいきました。いつも出される薬は種類は違えどステロイド、どこに行っても治らない。どうして? もしかしてステロイドがいけないの?

お母さんはネットで「ステロイドを使わない皮膚科」を探したんだ。これってさ、「辛くないカレー」とか、「タイヤのない三輪車」みたいじゃない?…大丈夫かな。

その皮膚科に行って、いろいろと話をしてね、お母さんはお兄ちゃんたちにステロイドをぬるのやめたんだって。

そうしたら「もー大変大変。顔中血だらけ、かき傷だらけ。保育園の園長先生からも、担任の先生からもあれこれあれこれ、いっぱいいろんなことを言われたわ」って今は笑ってる。だって、今ではお兄ちゃんもお姉ちゃんも、すっかりアトピーが治っているから。


そして、ぼくの誕生です。産婦人科でぼくは生まれました。お母さんは、ステロイドのことは(身に染みて)勉強したのだけど、ドライテクニックのことは知らなかったの。産婦人科の若い看護師さんは、ぼくをシャボンで洗うの。ポンッってプッシュしたら泡がモコモコモコって出てきてね、それを両手に伸ばしてフニフニーってぼくを洗うの。頭にワンプッシュ、体にワンプッシュ、おしりにワンプッシュさ。 「ポンッ、プシュ、フニフニー」 夢にまで泡がでてきたよ。

ぼくはがんばった。お母さんを心配させたくないしね…。でもついこの間まで、柔らかい羊水の中でふわーって浮いていたのに、びっくりさ。生まれたとたん、世間の泡にもまれて、生きていかなきゃならないなんて。男はつらいね。

退院するころには、ぼくの皮膚はついに悲鳴をあげた! まっかっか。お猿のお尻はまっかっか、ぼくのお顔もまっかっか。夕焼け小焼けはまっかっか。ぼくのおなかもまっかっか…なんて歌を歌う気分じゃなかったけど。

退院してからは、ママはぼくに石鹸を使わなくなったよ。ぼくのママはさすがさ。でも産婦人科入院中の1週間、毎日「ポンッ、プシュ・モコモコフニー」だったから、赤くなっちゃう。

家に帰って1カ月、ついに「アトピーにかけては百戦錬磨」のママも悲鳴をあげて、ぼくを皮膚科につれてった。あの皮膚科さ。「タイヤのない三輪車皮膚科」さ。

皮膚科の先生の第一声。「どうしてこうなっちゃったの?」

じつはぼくの皮膚はもう赤みをすぎて、ボロボロしていたの。ママはお兄ちゃんたちの時に見た症状に比べたらまだまだって気分だったから、「ちょっと家でがんばりすぎたわ」って、心の奥で思ったらしいよ。同感です。

産婦人科を退院して自宅へ
生後1カ月目

皮膚科に行ってから、ぼくのお風呂は中止になりました。遅ればせながらのドライテクニック。「皮膚をまったくぬらさない」ってやつ。聞くだけだと「卵のない親子丼」とか「電気をためないハイブリッド車」みたいに思えるけど、効果抜群で、中身は「レクサス」だったよね。苦もなくスピーディ。食事制限なし、血液検査なし(おかげで泣かずにすんだよ)。1週間たつと、おっ、いい感じ。赤みも汁も止まったね。うふっ。

2週間経つと、「きれい!」乾燥もあまりなくなってさ。3週間たつと、なかなかいい顔になったよ。こうでなくっちゃ。未来のぼくのお嫁さんにはこの顔で会いたいね。

「お風呂をやめるだけでよくなったわ。退院する日に初めて石鹸で洗われているのを知って、びっくりした。ドライテクニックを知っていればよかった。」


たぶんママって、一度転んで起き上がるタイプなんだな。つい、ちょっとつまずいちゃってさ、こけちゃうのね。でも起き上がるんだ。七転び八起きだっけ? 7回転んだら、7回起きればいいっちゃいいんだけど…。小児科とか産婦人科でつまずくんだから、人生は難しいと思うよ。まだぼくは、最初の一歩を歩み始めたばかりだけど(あ、まだ歩けないから一歩前ね)、人生のなんたるかについて、考えちゃうね。

とにかく、ぼくはママが大好きさ。世界中で一番大好き。このことは、まちがいないよ。君も? やっぱりね。

ドライテクニックをはじめて3週間後

memo

肌を守るドライテクニック。
赤ちゃんの肌は、石鹸で洗わなくてもスベスベです。

産婆さんが、自宅で子どもを取り上げていたころは、生まれたばかりの赤ちゃんを石鹸で洗うことはありませんでした。たらいにお湯をはり、そっと血をぬぐった後は、産着にくるんでお母さんの横に寝かせていました。

今の豊かな日本では、石鹸入浴が当たり前のことになりました。広島市在住・助産師の前原さん(赤ちゃんのためのドライテクニック参照)は、自宅出産のお手伝いをしておられます。赤ちゃんの薄い皮膚を洗わないで経過をみていると、時間とともに胎脂がとれてしっとりとした皮膚が現れてくるそうです。

皮膚は強い臓器なので、毎日洗っても問題が起きない人が多いのですが、赤ちゃんの薄く柔らかい皮膚は、乳児専用の石鹸やシャンプーであっても界面活性剤で洗うと壊れてしまいます。

薪(まき)で湯を沸かしていたころは、冬の風呂は数日に1回が当たり前でしたし、江戸時代にさかのぼると、風呂のある家に住む人はごく少数でした。日本を離れて考えると、毎日入浴する民族は少数派です。遊牧民の人々は、風呂のない生活が日常ですし、チベットの国にもお風呂はありません。多くの民族が風呂に入らずに生活を営んでいるのは、皮膚は洗わなくてもよい臓器だからです。

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